
一見しただけでは、まるで宝飾品のように思える端正なたたずまい。
展示会などで初めて見た人は必ず「これはなんですか?」と尋ねるそうです。
この物体の正体は、なんとフスマの「引手」。つまりフスマを開け閉めする時に手をかける、あの部分の金具なのです。これが今回紹介する「華引手」です。
お話を伺ったのは谷元フスマ工飾株式会社の谷元 亨社長です。
谷元社長は東京で大手コンピューターメーカーに勤務していましたが、一念発起して家業のフスマ会社を継ぐべく大阪に戻ってきました。
谷元フスマの本社がある八尾エリアは、いわゆる町工場が集まる製造業の街。谷元社長の「モノづくり」の血が騒いだのかもしれません。
「モノづくりをしよう、と帰ってきたのですが、自社の製品を正面から見つめると、なんともチープな感じがして愕然としました。」
当時の谷元フスマの主力商品は集合住宅向けのフスマだったので、効率よく低コストでしっかりしたモノを製作することに重点が置かれていて、デザイン
などはほとんど考慮されていなかったのです。
「これはいかんなあ、もっとカッコイイものを作りたいなあ、とそう思いました。」
『カッコイイ』ものを目指したのはみたものの、それがいったいどんなものなのかは明確にならず、照明器具や家具などの試作をしては失敗する
という試行錯誤の日々が7年間ほど続きました。
『カッコいいもの』を目指して作ったのはフスマ以外のものばかり。
しかし、本業のフスマこそなんとかしなければいけない製品なのだ、と気付いた谷元社長は、フスマにプリントすることを思いつきます。
「『これはいいものができた』、そう思ったんですが、納品して部屋に設置してみるとどうにもしっくりこないことがある。
柄が部屋に対して主張しすぎるんです。なにが違うんだろうと悩んでいた頃に、ある工場見学で引手の組み立て工程を見る機会があって
閃いたんです。」
引手製造にプリントの工程が組み込めそうだ。そう考えた谷元社長がさっそく試作してみたところ、実にしっくりくるものができあがりました。
「華引手」誕生の瞬間です。
「『すごくかわいい!でも、これはなに?』、とまずそんな反応をいただいて『フスマの引手です』と伝えると驚きとともに絶賛をいただけました。」
多くのインテリアコーディネーターに支持を得た「華引手」は、プリントの模様や色のバリエーションを増やし、35柄×3色の105種に。さらに引手の形に
角型を加えて現在に至っています。
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丸型の華引手 | 角型の華引手 |
また、「華引手」を引き立てる様々な色合いのフスマ紙『いろいろ』も合わせて開発し、引手とフスマ紙の組み合わせによる選ぶ楽しさも加わって
います。
< 谷元フスマ工飾社長の谷元 亨さんのコメント>
地味で実用一点張りの和のフスマから、おしゃれでモダンなフスマへ。『華引手』と『いろいろ』で和室のイメージを変えていきたいですね。
また、フスマに限らず『間仕切り』の可能性を拡げて、空間の価値を上げるような製品を開発していきたいです。谷元フスマ工飾株式会社
http://t-f-kosyoku.com/