本格的「ホームオートメーション」の世界:インテリアコーディネーターのためのスマートホーム入門(第五回-2)

本格ホームオートメーションの世界

ホームシアターの歴史が生んだ「カスタム」型ホームオートメーションの世界

前回説明したとおり、現在流通しているAIスピーカーは、既存のベンダーの提供するサービスに則り、ある意味使用者自身の情報も提供しながらその見返りに便利なサービスを受けるといった仕組みで成り立っています。
そしてその情報の保存、管理、活用は、各ベンダーが管理するクラウド上に預けられています。

IoTが全ての家電とサービスをつなぐためのオープンな基盤であるとするならば、そしてそれに皆が納得して普通に使用するなら、スマートホームの未来は明るく、面白いと言えます。

一方で、自分の生活情報をビッグサービスに委ねるのはちょっと・・・という人もいるでしょう。
いつも自分の子どもを誘拐されたらとビクビクしているような超セレブでなくても、また、GoogleやらAmazonほどのベンダーのセキュリティーが破られることはないだろうとは思いつつも、自分のプライバシーについてはできるだけ外に出したくないという発想の人がいるのはよく理解できます。

そこで、技術を持ったカスタムインストーラーと呼ばれる専門家に、スマートホームの構築を委ねて特別に誂えてもらおうという発想がでてきます。
アメリカでは10年以上前から花盛りのホームオートメーションという分野がそれです。

ホームオートメーションは、古くは、ホームシアターを映画館のように演出するアイテムでした。
家に専用の部屋を設け、プロジェクターを使った大画面で映画館のように仕立てる。
そして、手許の専用タッチパネルで「シアターON」を押せば、ブザーが鳴り、スクリーンが降りて、照明が落ち、プロジェクターの映像が投写され、映画がスタートする・・・かつてハリウッドスターが映写技師を雇ってホームパーティーをしたように、あくまで「非日常」を味わうためのシステムだったのです。

それが、インターネットの普及により、家中の家電を、しかも外出先からでも操作できるようになった結果、「日常を司る」ものとしてホームオートメーションが確立しました。北米のデンバーで開催されたCEDIA EXPO(https://www.cediaexpo.com)でも沢山のホームオートメーションに関する新商品の発表や、カスタムインストーラー向けのセミナー等で賑わいました。

この世界では、Crestron(クレストロン http://crestronjapan.com)やControl4(コントロール4 https://www.control4.com)といったホームオートメーションの「コントローラー」を扱うブランドを中心に、特定のベンダーに依存せずさまざまなIoT機器を連携、操作するモノやソフトウェアが存在し、カスタムインストーラーがユーザーに合わせて適切な組み合わせを施して提供します。

また、その多くは、クラウドに一切の情報を預けるのではなく、家の各所に置かれた専用の端末の中に、各端末の役割に合わせてデータを植え付けます。
また、クラウドをアップする先もクレストロンなどが自ら管理するサーバー上。
あくまでも個人情報として、信頼できるインストーラーとともに自分たちの手に握ったままといえます。

【ハイエンドホームオートメーションなら、個人情報を一切利用させない。】

【ハイエンドホームオートメーションなら、個人情報を一切利用させない。】

スマートホームの具体例

ここでは一例として、スマート・ホーム株式会社(代表 西本昭裕さん http://smart-homes.jp)が今年の5月にインストールした避暑地の別荘を取り上げます。

ここはオーナーのTご夫妻が休日に愛犬と過ごす別宅で、クレストロンをベースにしたホームオートメーションシステム、スマート・ホーム株式会社のSUITE Smarthomeシステムを導入されました。SUITEは、スマート・ホーム株式会社がオーナー毎にフルカスタマイズする高級ブランドです。

【クレストロンのコントローラー】

【クレストロンのコントローラー】

ガレージに車を入れるとセンサーで照明がONシャッターが閉じます
玄関を入り、照明の壁スイッチと同サイズ(5インチ)の縦型タッチパネルで「ALL ON」を押すと、家全体の家電が始動します。
東京のご自宅へ戻るときは逆に「ALL OFF」で全館の家電のスイッチがOFF状態になります。

【照明スイッチと同サイズタッチパネル】

【照明スイッチと同サイズタッチパネル】

このT邸では、下記の6つスマート化を実現。現在可能なほぼすべてのスマート化が施されています。
部屋のあちこちにタッチパネルが壁付けされているほか、外出先からは手持ちのスマートフォン等から各設備の現状確認と操作ができるようになっています。

【専用タッチパネル】

【専用タッチパネル】

【専用タッチパネル】

【専用タッチパネル】

(1)照明の制御

環境を快適化するもっとも重要なものでありながら、とかく軽視されがちな住宅設備が「照明」です。
照明とそのスイッチ計画においては、できるだけ使い勝手が良好でスイッチを意識しなくてすむようなゾーン分けを行い、その空間の適切な位置に適切な種類のリモコンを設置します。

各部屋には、10インチまたは5インチにタッチパネルを壁に配置。また、廊下には、SUITE SmarthomeイチオシのベルギーのスイッチメーカーBASALTE(バサルテ)のスマートスイッチを配置。一見して照明のスイッチには見えない、このオブジェのようなタッチスパネルは、押し方(タッチ、長押し)や組み合わせ(上のみ、上と下の同時押しなど)によってさまざな操作が可能で、もう立派なインテリアアイテムです。

【壁面に設置されたBASALTEのスマートスイッチ】

【壁面に設置されたBASALTEのスマートスイッチ】

(2)窓周りの制御

照明と同じく光をコントロールするアイテムとして、カーテンがあります。
T邸でも、レースおよびドレープカーテンの制御を電動タイプとし、それらを制御。

【電動で開閉できるカーテン】

【電動で開閉できるカーテン】

タッチパネル等で任意に動かせるほか、タイマーでも連動させることが可能です。

(3)エアコンの制御

広い別荘の各部屋に配置されたルームエアコンをタッチパネルやセンサーで一括管理し制御。

基本は、エアコンにJEMA(日本電機工業会規格端子-A)のHA(ホームオートメーション)端子がついていれば制御や確認が可能です。
日本では、ダイキンが対応していますが、SUITE Smarthomeではイスラエルのブランドとライセンス契約を結び、それ以外のブランドのエアコンでも温度、風量モード、風向きといったすべての制御を双方向通信によって実現しています。

1階あるいは2階の平面図を描いたUIで、どの部屋のどのエアコンを制御するのかが直感的に分かります。
もちろん、季節の変わり目などには全エアコン一括制御で冷房から暖房にといったこともできます。

【制御パネルのエアコン表示】

【制御パネルのエアコン表示】

(4)床暖房の制御

エアコンと同様に、空気をコントロール。
エアコンと同様、各床暖房のON/OFF信号がJEMAないしHA端子を通じてクレストロンのシステムコントローラーで制御され、各部屋/エリアに配置されたキーパットで現状確認および操作ができます。

床暖房は、[1階]のLDK、ホール、シアタールーム、トイレに計5台、[2階]は、2つの寝室、2つのゲストルームのほか、洗面室と浴室、トイレへ計8台を設置しています。
避暑地にあるT邸ですが、冬はとても厳しいため、熱源機のON/OFFまでも制御しています。

【熱源機のオンオフもタッチパネルからコントロールできる。】

【熱源機のオンオフもタッチパネルからコントロールできる。】

(5)セルフセキュリティ

ガレージや玄関といった主要箇所にカメラを設置。いつでもその場の様子を確認したり、電動シャッターや電気錠の操作ができます。
T邸では、警備会社と契約するのではなく自分のことは自分で守るのを基本に、ネットワークカメラと電気錠を自身で操れるように設定しています。
1階ガレージに2つのシャッター、2台のネットワークカメラを設置。ゲストルームを除く各部屋の5インチタッチパネル、リビングの10インチタッチパネルでいつでも確認できるほか、外出中にスマートフォンからも見ることが可能です。

(6)ホームエンタテインメント

ここでは、クレストロンと連携したSONOS(ソノス)というブランドのスピーカーシステムが活躍。

1階プレイルームにはホームシアターがあり、AVアンプでTV、BDレコーダー、AppleTV、SONOS、PS4、GAMEの6つを切り替えて大画面とサラウンドで楽しめます。ハーフミラーディスプレイで、テレビをつけたときだけ映像が浮かび上がるシステムですね。

【ホームエンターテインメントシアター】

【ホームエンターテインメントシアター】

この部屋のサラウンド再生を司っているAVアンプには、ネットワークオーディオスピーカーSONOS(ソノス)と連携する「works with SONOS」という機能があり、このAVアンプと、寝室など別の部屋の埋め込みスピーカーのシステムが、あたかもひとつの音楽配信システムのように動作します。

【プレイルームの壁にある5インチのタッチパネルで、この部屋のBGMのみならず、他の部屋のBGMもコントロール】

【プレイルームの壁にある5インチのタッチパネルで、この部屋のBGMのみならず、他の部屋のBGMもコントロール】

【バックヤードに各部屋へ配信するAMPが設置】

【バックヤードに各部屋へ配信するAMPが設置】

2階にはご自身の寝室の他に、ベッドを備えたゲストルームが2つ用意されており、それぞれ5インチタッチパネルが壁付けされて、自室の照明、床暖房、カーテン、エアコン、そしてSONOSシステムを使ったBGMの操作が可能です。ここはゲストルームですから、このパネルからの操作には他の部屋を制御する権限が与えられていません

【ゲストルームには、ゲストルームだけを制御するパネルを設置】

【ゲストルームには、ゲストルームだけを制御するパネルを設置】

そして、スピーカーはというと、フローティングした収納家具の下側に埋め込まれています。佇まいまでスマートですね。

【収納家具下部に埋め込まれたスピーカー】

【収納家具下部に埋め込まれたスピーカー】

実際、クレストロンとソノスの連携が実現するマルチルームオーディオがどれだけ便利でスムーズなのか、その様子を見てみましょう。

そして、朝イチのシャワーがどんなに快適か想像できますよね!

スピーカーは小口径ながら十分なサウンドを響かせるものをダウンライトのように天井配置しています。

10年後のスマート住宅へ

ここまでご紹介してきた、いま実際にあるスマートホーム。
ではこれから10年後はどうなっているでしょうか??

スマートホームの父ともいえる、コンピューター博士・電脳建築家の坂村健さんは、「もう研究段階としては当然6Gもやっています」と言いつつ、最新のスマート住宅を案内して下さいました。

東京都北区赤羽台にあるUR都市機構の1960年代の団地「スターハウス」の一角をリノベーションした「Open Smart URのモデルケース(https://www.ur-net.go.jp/rd_portal/ur2030/index.html)」がそれ。
坂村健さんUR都市機構とともにデザインした未来をイメージする住戸のひとつで、44号棟の44㎡に44個のセンサーが使われ、AIとIoTの提案がふんだんになされています。

この団地が建てられた昭和30年代と、2030年代の間を行ったり来たり。
デジタル化とアナログな世界を、ノスタルジー趣味ではなく行ったり来たりしたいですね。

【昭和30年代当時を再現した住戸。ダイニングキッチンですね】

【昭和30年代当時を再現した住戸。ダイニングキッチンですね】

【2030年の団地のイメージ。冷蔵庫内のカメラで不足している食材を教えてくれ、テレビから購入できる】

【2030年の団地のイメージ。冷蔵庫内のカメラで不足している食材を教えてくれ、テレビから購入できる】

【昭和30年代のお風呂】

【昭和30年代のお風呂】

【2030年のお風呂。ヒートショック防止のためセンサーも活用されている】

【2030年のお風呂。ヒートショック防止のためセンサーも活用されている】

 

スマートホーム入門目次
インテリアコーディネーターのためのスマートホーム入門
スマートスピーカーってなんだろう?
日本のスマートスピーカー LINE Clova
スマートスピーカー LINE Clovaの実践編です
スマートリモコンの定番! ラトックシステムのスマート家電リモコン
スマートスピーカーと本格ホームオートメーションその1
スマートスピーカーと本格ホームオートメーションその2(このページです。)

遠藤義人氏この記事を書いたのは:遠藤義人氏
fy7d(エフワイセブンディー) 代表

ステレオサウンド社で住宅インテリアとホームシアターを融合する雑誌「ホワイエ」を編集。2015年に独立、個人オフィス開設後もそのコンセプトを引き継ぎ、大画面&いい音を通じて、家族やゲストみんなで楽しめる場としての住まいや暮らし方を提案している。

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