
例えば、ひとつは壁際のフロアスタンド、ひとつはカウンターのテーブルランプ、降ってくる音はペンダントから。空間の中の様々な場所にあるスピーカーから音を出し、わざと均等ではない音空間を作る。
ソニーのLED電球スピーカーから始まった”音だまり”プロジェクトを全3回でレポートする。
第1回 ソニーモバイルコミュニケーションズ LED電球スピーカー LSPX-101E26 |
第2回 大光電機 専用灯具 VOCEシリーズ |
第3回 音だまりという空間演出 |
お邪魔したのは2017年4月にオープンした大光電機社の技術研究所。エントランスには3396個の特注タイル照明で構成した巨大な光壁が出迎えてくれる。
この光壁を含め技術研究所の照明デザインも担当された安東克幸氏に、お話を伺った。
11月中旬に発表された「LED電球スピーカー LSPX-101E26」とのコラボ製品「VOCE」。
「音を灯し 光を聴く」というコピーが印象的だ。
安東氏はどういうイメージで”音”を出す電球の灯具をデザインされたのだろう。
「蓄音機や管楽器、拡声器のフォルムのように広がっていくイメージを意匠に取り込んだら、音や光の広がりとも結びつきやすいのではないかと考えデザインの方向性を決めました。
ランプ(LSPX-101E26)自体がデザインされているものなのでそのデザインを生かすために側面を透明に、床やテーブルに影ができないよう光を拡散するために前面を乳白色にしています。
消灯時の見え方も考えて、ランプの根元が見えないようにサンドブラスト加工を施しています。また、塗装の質感や、繊細さを目指したスタンドのフレームデザインには特にこだわっています。」
さらに灯具のデザインは細かいところまで調整が続いたという。
表の乳白色の面とスピーカー部分の位置関係。安東氏は少し奥に入り込んだデザインを出したが、SONY社からは「それでは音がこもってしまうので表に出してほしい」という要望が返ってきた。ミリ単位の調整の結果、乳白色シェードとランプの間を3mmとし、音の出る開口径を5mm大きくした。
またランプそのものの性能も、BtoC製品からBtoB向けに他の照明と一緒に使いやすい色温度(2700K)と、求める明るさを大光電機社側から提案したという。(性能の違いは第1回の製品構造図を参照)
イタリア語で「声」を意味する「VOCE」という製品名に関しては、ネーミングから「音」と「人」が一緒に感じられること、またロゴのデザインにも製品自体のディテールを取り込むことで製品とロゴの結びつきを強めた。
インタビュー時、次の課題は灯具の性能や型番を表すシールを貼る位置だという。
「どこに貼っても納得いかないんです。シールを貼るためのスペースを考えてデザインしていませんから当然ですよね。でも、自分が納得のいかないものを世に出すのは嫌なので、細部にまでこだわりたいと思います。」
結局、貼る位置だけにとどまらずシールもデザインされたそう。
さて、今回対象にした電球にはスピーカー機能がついているわけだが、そのことについてどう思うか、ちょっと意地悪な質問を投げてみた。
「まだまだ照明と人の距離は遠くて、ただ機能的に明るくなればいいという人も多いと思います。自分の好きな音やあかりが灯せ、照明がより身近なものになるのはいいなと思います。
この製品は不特定多数の人が行き来する空間よりも、家族や仲間と一緒に音と光をシェアするような、それくらいのスケール感で考えました。」
最後にソニーモバイルが提唱している「音だまり」について伺った。
「今回のようにプロダクトのデザインもしますが、空間の照明計画をするときには”光だまり”という表現をよく使うんです。
人が長く滞在する場所とか、人を光で導いていくとか、エントランスに光をためて入り口を際立たせるとか、そういう形で光の強弱でゾーニングすることはよくあって、「光を溜める」という表現をするんですが、「音のたまり」っていうのは自分の中でも新しいキーワードですね。
今後このプロジェクトをきっかけに「光と音のたまり」でおもしろい空間計画ができたらいいなと思います。」
第1回 ソニーモバイルコミュニケーションズ LED電球スピーカー LSPX-101E26 |
第2回 大光電機 専用灯具 VOCEシリーズ |
第3回 音だまりという空間演出 |
関連リンク:
▼LED電球スピーカーLSPX-101E26、IoTサービスへのお問い合わせ窓口
https://www.sonymobile.biz/contact/(ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 IoTビジネスグループ)
(小池氏と”音だまり”について語り合いたいという方もこちらからどうぞ)
▼大光電機・VOCE(灯具)
https://akari-premium.com/premium/class_s/voce/
▼大光電機・技術研究所(安東氏のブログ記事)
http://www2.lighting-daiko.co.jp/tact/report/no10.html