
おしゃれなインテリア照明とはどんなもの?
家具やカーテン、アートや雑貨など、インテリアをおしゃれにするものはたくさんあります。でも、それらを活かすも殺すも照明による演出次第です。この特集では、おしゃれな照明テクニックについて、照明デザイナーの長根 寛氏にわかりやすく解説していただきます。
おしゃれな照明はお化粧に似ている
人の顔も部屋の空間も立体物である限り、光の制御でさまざまに変化することができます。
お化粧で顔に陰影を施し、少し色をのせることで、華やかでおしゃれな印象に感じますよね。
部屋の空間も光だけではなく、「影」を作り、光の色を調整することで、おしゃれな印象を作ることができます。
日本の照明はなぜおしゃれに見えないのか?
日本の照明はバーンと明るい
せっかくお化粧を施しても、白いパウダーだけを顔全体にぬってみたらどう見えますか?
天井の中央から部屋全体に光がまんべんなく照射されている状態は、そんな状態に似ています。人もそうですが、影が無くすべてが見えている状態よりは、影があるミステリアスなところがある方が魅力を感じるものです。
おしゃれに見える照明のポイント
陰影を作るにはどうする?
お化粧では、顔全体にベースをつくり、頬とおでこを高く見せるための光を入れて(より白くぬり)顎と目の周りに影を作りますよね。
部屋も同じなんです!
部屋全体にベース照明で一定の明るさを作り、見せたい壁面に間接照明を入れ、テーブル上に強い光を落とす。作業と関係ない床には影が残るようにする。

壁面に取り付ける照明器具(ブラケット)で天井を照らし上げる間接照明。

家具の隙間にライン照明を取付け、足元を照らし上げる間接照明。

スタンドライトや集光のダウンライトにより手元に光を落として空間としての陰影バランスを完成させる。
こんな感じで部屋の空間全体を光と陰の筆を使って陰影をつけていくことで、奥行感を感じる深みのある魅力的な印象を生み出すことができます。
色は光の中にある
雨上がりに見ることができる虹は七色で美しいですよね。
太陽の光には赤から青まで多くの色が含まれています。だから太陽光の元では様々な色が美しく見えます。つまり、色とは光の中にあるのです。
ですが、人工で生み出した照明の光にはすべての色が含まれているわけではありません。
例えば「赤」の光の要素を持っていない光を、赤と思っているモノにあてても、赤の色は跳ね返ってこないため、濁ったあずき色のように見えることがあります。
そのため、色の再現性を数値化した演色性(Ra)を参考にして光を決めます。
時々どんよりとしたお化け屋敷のような空間に出会うことがありますが、そういったときは演色性の低い光源を使用していることが少なくありません。

空間に陰影をつくり色を差す。色は光の中にありますから、演色性(Ra)の高い光源を使った方が発色が良くなります。
演色性とは?
照明器具がモノや空間を照らした時の色の再現性を占める指標です。一般的に自然光を基準として、近いものほど「良い」「優れる」、かけ離れたものほど「悪い」「劣る」と判断され、平均演色評価数(Ra)を使って表すのが一般的です。 Ra100は、自然光が当たったときと同様の色を再現していることを意味します。
リビングという部屋の特性と照明デザイン
さまざまなシーン
人にはいろんなタイプの顔がありますが、自分の顔は一つだけです。
その一つの顔で、会社に行って、昼は同僚と食事をしたり、夜はレストランにも行ったり、BARに行ったりもします。
リビング空間は正に一つの顔でありますが、そこには様々なシーンがあります。
朝の食事シーンから、昼の掃除をするシーン、夕方の団欒のシーン、夜ゆったりとテレビをみるシーン、暮らし方によって様々です。
用途によって最適な照明は変わる
シーンに応じておしゃれを楽しむ
人はそのシーンに応じて化粧や服装を変えたりして、その時を楽しみます。
リビング空間もそのシーンに合わせて装いを変えてあげることで、よりそのシーンを楽しむことができます。
それは、音楽をBGMとして楽しむことに似ています。
光もシーンに合わせて装いを変えてあげましょう。
リビング照明シーン変化の手法
一つの顔でいくつかのシーンを演じなくてはならないリビングという空間を如何にして変化させるのか?
様々な照明器具をその都度、オン・オフ、調光してもよいですが、自分好みの照明デザインをワンタッチで切り替えるシステムがあります。
空間内に設置したダウンライトや間接照明を回路ごとにシーンコントローラーに組み込み、イメージする光をプログラムして、シーン呼び出しのスイッチボタンで、それぞれのシーンを呼び出せるのです。

シーンコントローラースイッチを使ってイメージするシーンを呼び出します。写真はルートロンのグラフィックアイ。

スイッチはOFF:昼のシーン。カーテンを開け自然の光を取り込みます。

スイッチ1:団欒のシーン。天井の間接照明が空間全体に広がり、開放感を感じさせてくれます。
空間全体が光で満たされ、ふくよかな安心感につながっていきます。

スイッチ2: なごみのシーン TVモード。足元に光を集め、ゆったりとした空気感を演出します。手元に集光の光を落とし、ドリンクなども楽しめるようにします。
TVの輝度感を軽減するために、TVの近くに間接照明の光を差し込みます。

スイッチ3:なごみのシーン シアターモード。プロジェクターの映像に影響がない範囲で、足元に光を集め、ゆったりとした空気感を演出します。
リビングのおしゃれ照明テクニックは後編に続きます。
【著者紹介】
長根 寛
東京デザインパーティー代表
デザインディレクター 照明デザイナー
視覚情報からの人の心理行動からモノ・コト・空間をデザインディレクションする。2007年京和傘の老舗「日吉屋」より照明器具の古都里シリーズを発表。 2008年、有機EL照明「ELRING」有機EL照明最優秀賞を受賞。2014年高野山開創1200年を記念し総本山金剛峯寺の歴史上初めての夜間拝観に伴う日本最大規模の石庭蟠龍庭のライティングデザインを行う。