インテリアと照明、その基礎と実践:第一回 光と生活

インテリアと照明 その基礎と実践

照明はインテリアを彩る重要なエレメント

家具、カーテン、ファブリック、壁紙、床材、そして様々な雑貨。インテリアを彩る要素はたくさんあります。そして、それらをイキイキとさせられるかどうかのカギとなるのがインテリア照明です。しかし、簡単なようで難しく、わかっているようで思いのほか知られていないのが、照明なのです。
この連載は、インテリア照明の基礎知識からスタートして、照明とインテリアにまつわる様々な疑問、照明器具の正しい選び方などを、具体的な事例を交えて解説する、インテリアと照明の実践ノウハウ講座です。
第一回は、「光」について基本的なことをおさらいしてみましょう。

グレアと、その悪影響について

光が無いと物が見えない、ということは、中学や高校の時に教えられた誰でも知っている事です。しかし、物の見え方が光によって大きく変わることを自覚している人はさほど多くありません。私たちの生活は光によって多くの恩恵を受けているのと同時に、様々な悪影響も受けているのです。

例えば、野球帽の「ツバ」は何のためにあるのかというと、被ったり持ったりする時に便利だからではなく、太陽(又はナイター照明)の強い光を遮りボールを明確に早く見るためだと言えます。

この強い光の眩しさを「グレア」と呼び、これをカットすることがインテリアの仕事に従事する人にとって成功する基本だということができます。なぜなら、照明の光源がLED中心になったこと、グレアが苦手な高齢者が増えたことがその背景にあるからです。

グレアとその影響

グレアは物が見にくいだけではなく目の疲労を誘発します。眼球は視神経によって直接脳に繋がっていますので、眩しい光を見ると目の疲労を避けるため脳が身体に指令を送ります。それが肩こりだったり、前頭葉が重くなったり、首が痛くなったりする原因の一つだと言われています。日本人は外国人に比べ眩しい光に強いのですが、これが逆にいつの間にか疲労を蓄積している事にもなってしまうのです。

さらにLEDは非常に直進的な光を放つ、という従来の白熱灯や蛍光灯とは異なる性質を持っています。最近、商業施設だけではなく住環境にも「間接照明」という手法が多くなっているのは、直進的な強い光を避け一度壁や天井にリバウンドさせることによってグレアを確実に避けることができるためでもあるからです。

高齢者は概して明るい光が必要ですが、グレアは光が眼球内で拡散するので若い方より悪影響があります。また赤ん坊や幼児もグレアは避ける必要があります。例えば、ベビーベッドが置かれている部屋にLEDのダウンライトを設置することは避けるべきだと言えます。ダウンライトを顔面に受けて育った赤ん坊はすぐイライラして泣きじゃくる子に育ってしまうということもあり得るからです。

光の効果を語ってお客様の心をつかもう

お客様にお話しすべき光の効果はたくさんありますが、私の経験ではいくつかに集約されます。いわゆる衣・食・住と言われる生活の基本にまつわる照明がお客様のこころをつかみます。あくまでも物理的ではなく普段の生活を例にとってやさしく分かりやすく話すのがコツです。

はじめに「衣」。服飾も同じですが顔の見え方を説明すると効果的です。天井に設置されている照明は頭の上から光が当たるので、目の下やあごに影ができて不健康に見えますが、ブラケットやスタンドは横から光が顔に当たりますので、立体感が出てとても美しい顔になります。

【上からの照明は不健康そうな表情になりやすい。また光源の色も見え方に影響を及ぼす。】

【上からの照明は不健康そうな表情になりやすい。また光源の色も見え方に影響を及ぼす。】

また朝必ず歯磨きをする洗面の照明も一日の元気を感じる光として重要です。光の効果でその日1日の気分が変わります。顔色がよく見えれば、元気な気分で一日をスタートできるというものです。最近は女性だけでなく、若い男性でも大変興味を持っています。

【間接照明にすると表情が柔らかくなる。暖色系の照明は肌を健康に見せる。】

【間接照明にすると表情が柔らかくなる。暖色系の照明は肌を健康に見せる。】

 

次に「食」。日本人の舌の感覚は世界でトップクラスと言われていますので、見え方が悪くても美味しさを感じることができるのですが、演色性などが企業間の競争でクローズアップされてきたため、次第に食卓の見え方が語られるようになってきました。

【光源によって食べ物の見え方が大きく変わる。】

【光源によって食べ物の見え方が大きく変わる。】

ダイニングはリビングとキッチンの中間にあるのでそれぞれの影響を受けますし、テーブルの上にしっかりと光を落とすのが難しいと言った面もあります。美味しく食べられる照明はお客様にとって興味津津の話になるでしょう。

【ダイニングは照明器具の種類とともに位置も重要になる。】

【ダイニングは照明器具の種類とともに位置も重要になる。】

 

最後に「住」。部屋が広く見える照明方法や、リラックス感が増す光の手法等も重要ですが、やはり健康に関する関心度はトップクラスなので、前述のグレアとセットで睡眠の重要性を話されると良いでしょう。人間は太古の時代から太陽の運行に沿って生活してきたので、脳に光のリズムを持っています。朝の赤くて暗い光から昼に向かって次第に白くて明るい光になり、さらに夕方には再び赤い光で暗くなる。

【太古からの太陽の運行が人間の脳に光のリズムを刻みつけています。】

【太古からの太陽の運行が人間の脳に光のリズムを刻みつけています。】

このリズムが生体リズムと呼ばれるもので、人類が皆経験してきた変えられない事実です。そうすると照明が必要な夜は当然夕方の延長線になりますので、赤く暗い光が必要なのです。これを逆にすると脳は昼間だと思い覚醒効果が出てしまい不眠症になる確率が増えるわけです。これはメラトニンという脳から出るホルモンが関係していることが分かっています。

以上のようにこれらは私達の生活にとって大変重要な光の知識です。これをインテリアのプロはお客様に伝える義務があると私は考えています。

次回から、これらについて具体的なお話をしていきましょう。

河原 武儀著者:河原武儀(かわはら たけのり)
照明士 インテリアコーディネーター
ライティング・コンサルタンツ・オフィス 代表
国際照明デザイナー協会(IALD)Affiliate会員
ライティングデザインスクール 顧問
住宅照明のコンサルティングに携わる傍ら、照明スクールやセミナーの講師、学会誌や雑誌への執筆活動も行う。テレビなどメディアへの出演多数。

 

 

 

 

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