私の仕事「ソフトファニシング」について

ロンドンインテリア通信第5回「ソフトファニシングという仕事」

ロンドンインテリア通信【第5回】

徒然なるままに書かせていただいたロンドンインテリア通信ですが、今回で一区切りということで、私のメインの仕事であるソフトファニシングについてお話いたします。
まずは、私がソフトファニシング(布のインテリア)の世界に飛び込んだ理由について。
もともと布好きというのもありますが、こちらでのインテリアにおける布の存在感は圧倒的だったんです。布のデザイン、質感、色、組み合わせ方、そして、この布によって、作り上げる空間の魅力にはまり、通い始めたのがカレッジのソフトファニシングコース。
上の子をベビーシッターに預けながら、そして下の子の妊娠をはさんで通った5年で、ソフトファニシングの世界にさらにのめり込みました。
コースは週一回のクラスでしたが、朝9時半から夕方5時まで、カーテンなどのいろいろなデザイン、フレンチプリーツ、ペンシルプリーツやペルメットなど、窓の装飾全般のデザイン、クッション、椅子、ソファのルースカバー(取り外し可能タイプ)の作り方などをみっちりと学びます。さらにアートの授業もあり、美術館、博物館に行ったり・・・。週一の授業ですが課題も多く、あっという間に次の授業日になるような日々でした。

5年かかって学校を卒業したあと、「さてこれからどうしよう?」と考えていたところ、大手インテリア会社でインテリアデザイナーとして働いていた知人が、仕事を依頼してくれました。
住宅のソフトファニシング全体のデザインと製作でしたが、閑静な街の4階建てという大きな物件で、クライアントは夫婦ともに弁護士でした。
1階から4階までのカーテン、ブラインド、クッション、ソファカバーなどのトータルデザイン&製作という、初仕事なのに大仕事!。ソファルースカバー(取り外し可能タイプ)などは、クライアント宅を計4回も訪問して立体裁断で製作しました。全てのことが緊張の連続で、吐きそうなくらいでしたが、なんとか無事作り終えることができ、クライアントのご夫婦にはとても喜んで頂けました。この時、クライアントから、「私は法律のプロだけど、インテリアは素人だから、あなたたちプロにお任せしてよかったわ。」という言葉をいただき、とても感動しました。イギリス人は、プロとしての誇りを持っている方が多く、相手に対してもプロとしてリスペクトする方が多いのだな、と感じた瞬間です。

Misty Interior作品写真

これは別のお客様の物件ですが、お持ちのアンゴラの毛皮をベッドカバーに仕立て直した作品。このようなこともソフトファニシングの仕事の一つです。

この仕事を高いレベルでやり遂げられたことがきっかけとなり、少しづつクチコミで依頼が来るようになりました。 ただ、いきなり個人で始めたので、全てが手探り。学校では、縫製方法、デザインなどを学ぶのがメインでビジネスに関しては教えてくれませんでしたが、師事した先生は、ご自身の経験談などを話してくださったり、とても参考になりました。
生地会社との契約、クライアントとの仕事の流れ、会計などについては、夫、友人たちの協力、そして自分でも一生懸命リサーチして少しづつ模索しながらようやく9年が経ったところです。
さて、こんな私のロンドンでの今の仕事のやり方をご紹介しますね。

Misty Interiorのホームページ

Misty InteriorのWebページ:http://www.mistyinterior.com/

まずファーストコンタクトですが、これまでお仕事をさせていただいた方からのご紹介、クチコミがメインです。それもほとんどの方がメールでお問い合わせされます。以前のお客さまが私のWebサイトを紹介してくださり、私のスタイルに共感を持っていただいてお問い合わせくださいます。

商談を進めるにあたっては、まずお客様のご自宅に伺います。家全体の雰囲気を感じ取ることで、お客様の嗜好を感じることができるからです。
その時にお客さまのご要望、ご希望をお聞きするわけですが、お客様の抱いている世界観を拡げていくのがソフトファニシングのプロとしての仕事になります。

インテリアイメージを固めるムードボード

MOOD BOARDなどを使って、クライアントとインテリアに対するイメージを共有していきます。

イギリス人は、インテリアについてしっかりとしたイメージを作り上げている方が多いですが、それをベースにしつつ、そのイメージを上回るような提案ができるようにしています。そのためにデザインや生地選びには、じっくり時間をかけます。Misty でも、いくつか生地見本帳はありますが、生地は特に重要なファクターなので、チェルシーハーバーにあるインテリアのショールームまで生地を探しに行くことが多いです。ここでは各社が、まるで図書館のような規模で生地見本帳を揃えています。その膨大な生地見本の中から、お客様の世界観にマッチする生地を見つけ出し、サンプルを取り寄せてお客さまにお見せするというわけです。

こちらはロンドンにあるデザイナーズギルドのショールーム。

こちらはロンドンにあるデザイナーズギルドのショールーム。

 

チェルシーハーバーにあるショールームの一例

これはチェルシーハーバーの中にある生地の会社のショールームです。

こんな感じでゼロからデザインしていくので、初めの打ち合わせから納品まで、約3か月程度かけることが多いです。

生地が決まると、次は縫製。イギリス伝統の手縫いによる製作です。
これがけっこう、地味な仕事なんですね。表に縫い目が見えないよう糸を一本、二本すくって縫い上げていきます。裏地もしっかり仕上げます。イギリスでは裏地なしのカーテン、ブラインドは考えられません。中綿入りのカーテンもあったりします。

手縫い作業1

手縫い作業2

手縫い作業3

これはカーテンのフレンチプリーツ(三つ折り)をとめているところです。

手縫い作業5

こちらは裏布を表布に縫っているところのアップ。
こういったことを手縫いで丁寧に仕上げていくのが英国流です。機能や丈夫さはもちろんのこと、見た目が特に重要で、ひだを多めに!と注文される方も少なくないです。

イギリス人のカーテン、ブラインドへのこだわりをよくあらわしているエピソードがあります。まだ私がソフトファニシングの学校に通っていた頃の話ですが、ある日、イギリス人ママ友が、ローマンブラインドをどうやって作るか聞いてきました。なんだか、とってもぷりぷりと怒ってる感じだったので、事情を聞いてみると、ローマンブラインドをオーダーしたところ、ミシンで縫われて、ミシン線がくっきり見える!と・・。
この彼女、愛車のポルシェをぶつけられても冷静だったような人なのですが、ブラインドをミシンで製作されたのには、冷静さを失ったのです。
これには、私もびっくり。イギリス人のインテリアへのこだわりを感じた出来事でした。

さて、縫製が終われば、いよいよ納品です。これもただお届けするだけではなく、取り付けまで私の手でおこないます。その時にもししわがでるようなら、その場でスチームアイロンをかけます。

カーテンを納品する

納品したお客様の家の写真。こちらはカーテンを取りつけた例。

 

イギリスには変わった形の窓がある

納品したお客様の家の写真。こちらはローマンブラインドを取りつけた例。

 

カーテンレール1

これはカーテン上部に取り付けたペルメット(上飾り)です。

カーテンレールなども、いろいろなタイプがあり、その場合はMistyの契約しているカーテンフィッターさんに取り付けをお願いします。イギリスでは窓も種類が多く、ベイウインドウと呼んでいる出窓も、三面、円形型などいろいろあります。
レールも、ポール、トラック、トラックを生地で覆うボード&フェイシャタイプなどバラエティに富んでいます。

カーテンレール2

これがボード&フェイシャ(Board &Faicia)。共布でトラックを覆うスタイルです。ボード&フェイシャ日本ではほとんど見かけないスタイルです。

カーテンレール3

これはベイウィンドウに取り付けたボード&フェイシャ。

 

カーテンレール4

ボード&フェイシャの細部が分かるように近寄って撮影してみました。

納品を無事終えてお客さまに喜んでいただけると、「またがんばろう!」という励みになります。
こんな感じで、デザインから縫製、取り付けまでトータルで行うのが私のスタイルですが、同じ学校の卒業生で、ここまでのビジネスをスタートする方は、実際少ないように感じています。
ほとんどの場合は、クライアントが生地をすでに選んで持ち込んで、製作のみというスタイルが多いです。でも私は、デザイン、生地選びから納品までトータルで仕事をしたいのです。イギリスの街には、カーテン、ブラインドはもちろん、椅子、ソファの張り替えのアップホースタリーなどなど、たくさんのインテリアショップがあちらこちらにあります。私が固定の店舗を持たないのは、街・場所・ジャンルにこだわらず、お問合せがれば世界のどこでもお伺いしたいと考えているからです。

人種のるつぼロンドン、そして仕事内容で判断し依頼をするイギリス人。
こんなロンドンだから、私も続けられたと思います。

今年でMisty Interiorも9年目を迎えることができました。こうやって書く機会をくださったサクセス!インテリアさま、この場を借りて お礼を申し上げたいと思います。また、今まで私の稚拙な文を読んでくださった方々、ありがとうございました。
またいつか、ロンドンインテリア通信でお会いしましょう!

 

Kozue GanerKozue Ganer
Misty Interior www.mistyinterior.com
インテリアデザイナー、ソフトファニシング デザイナー。 ロンドンにて、バイヤー、インテリアデザインコンサルタントとして活躍中。

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