「イギリス人を悩ませる住宅問題」:Kozue Garnerのロンドンインテリア通信【第二回】

ロンドンインテリア通信【第2回】

イギリス人の住まいに対する熱い思いにびっくりした私ですが、日本から来た私にとって一番驚いたのは、家の値段が上がること! 日本では、不動産価格は古くなれば古くなるほど価格が下がりますが、イギリスでは違います。
イギリスでは、家は「住まい」+「投資」なのです。

こちらでは新築の建売住宅より築100年の家のほうが人気で、価値の上昇のしかたも違います。

こちらは新築物件。但し豪邸です。日本円にして3億2千万円!

こちらは新築物件。但し豪邸です。日本円にして3億2千万円!

こちらは築100年ぐらいの中古で、屋内はリフォーム必須の物件ですが、上の新築と価格はほぼ同じなんです!

こちらは築100年ぐらいの中古で、屋内はリフォーム必須の物件ですが、上の新築と価格はほぼ同じなんです!

程度の差こそあれ、長期的には必ず不動産価格は上がると考えられているのです。

実際、1996年に、私たち夫婦は西ロンドンで2ベッドルームのフラットを購入しかけましたが、夫のガーナ転勤があって断念しました。4年後に、同じ建物の2ベッドルームのフラットの価格が以前の約3倍になっているのを発見し、いすから転げ落ちそうになりました。その後も住宅価格は高騰し、現在約867万の人口と言われるロンドンでは、家を購入するのがとても難しくなっています。

そんな状況ですから、新聞やテレビなどでも毎日のように住宅問題が取り上げられています。

その中で、よく聞くフレーズが「プロパティラダー」。日本語に直訳すとすれば、不動産のはしご、という意味です。フラットから始まり、家族が増えるのにつれて、少しづつ大きな家に移っていくというスタイルのことですが、 前述の通り 不動産価格が高騰しているため(特にロンドンや都市部)、小さなフラットですら高すぎて、このプロパティラダーに乗れない人たちが増えました。 例えば、我が家の近所でも、2ベッドルームで35万ポンドなんていう物件をたくさん見かけます。日本円(2016年9月現在、1英ポンドは約132円)で換算すると、約4620万円・・・。 しかも、ロンドンの住宅は、ロシア、中国、アラブなどの海外投資家が現金購入する場合もあるので、ローンを組んだりなど手続きをしている間にあっさり買われてしまうこともあります。

イギリス政府もどんどん高騰する不動産価格を問題視して、Help to Buy というプランを出しました(印紙税等の緩和など)。また、ファーストバイヤー(初めて家を購入する人)でも購入しやすい価格のフラットをたくさん建てる計画なども推進しています。

こちらは現在建築区中の、ファーストバイヤーへの補助があるフラットです。

こちらは現在建築区中の、ファーストバイヤーへの補助があるフラットです。

そのフラットの完成予想図の看板。

そのフラットの完成予想図の看板。

 

大手新聞の「Times」や「 Telegraph」 などにも週末は不動産、インテリアの別紙がついています。

イギリスの大手新聞の住宅に関する記事

衣、食、住の「住」が重要なイギリス、建築、インテリアの美に対してのリスペクトだけではなく、経済的なことも絡んでいます。モノポリーゲーム発祥のお国、なんだか納得します。

このようにイギリス人は、家は一生ものと考えません。だからとても身軽です。

家族が増えたら引っ越し、子どもたちが独立した後は、地方に引っ越すなど、 土地や地域に対しての執着も少ないように思います。

退職後にフランス、スペインに移住するという話もよく聞きます。(EU離脱で今後 どうなるかわかりませんが・・・)

もちろん、引っ越し費用や改造費などは、不動産価格が上がると見込んでいる場合も多いです。

 

私事ではありますが、悲しいことに昨年末義父が他界しました。残された義母は今の家では建物も庭も大きすぎる為、ただ今 小さな物件を購入手続き中です。これをダウンサイズと言いますが、イギリスではよくある住み替えのスタイルです。

義母はもうじき80歳になりますが、やはり自分のスタイルに合わせて購入後リフォームする予定です。

キッチンからバスルーム、階段の位置替えなど全面的にリフォームするらしく、設計事務所にすでに相談中で、今の彼女の人生の一大プロジェクトになっています。

年齢に関係なくいつまでも家、暮らしを意識することは、ある意味、高齢者の健康にもつながっているような気がします。

家は「一生もの」として買うものではなくても、毎日が心地よく暮らせるように考えながら、自分たちのスタイルにリフォームするものと考えるのがイギリス人。

そして、祖父母から譲り受けた家具たちや自分の好きな素材、デザインの家具、ファニシング。

夫の祖母から引き継いだ家具。彼の祖母が細かいデザインをお願いして家具職人に作ってもらったそうです。約70-80年ほど経っています。

夫の祖母から引き継いだ家具。彼の祖母が細かいデザインをお願いして家具職人に作ってもらったそうです。約70-80年ほど経っています。

 

そういう空間に暮らすこと、また育つことによって感性は磨かれ、心は満たされ、はやりものやブランドということだけで流されることがないロンドンっ子になっていくのかなと…最近感じるようになりました。

ファッションでも同じようなことが言えます。流行に踊らされることなく、自分の今の「好き」を上手に選び組み合わせることが、それぞれの個性となり魅力に繋がる気がします。 街を歩けば、真夏にウールのズボンを履いていたり、真冬にTシャツを着ていたり・・。

自分の「好き」に忠実に、それぞれのスタイルで楽しむのがイギリス人のファッション感覚。

自分の「好き」に忠実に、それぞれのスタイルで楽しむのがイギリス人のファッション感覚。

 

ある朝、ポルシェからさっそうとコートを羽織って子どもを学校に送り届けたイギリス人のママ友、裾にちらりとズボンが見える・・。

「時間がなくって、コートの下はパジャマなの~!ははは!」

こんな感じで、何でもありのイギリス人。周りもその違いを気にしないで受け入れ、さらにいろいろな人種、文化が交じり合う国際都市、それがロンドンです。いろいろ問題あっても、やっぱりイギリス、そしてロンドンはおもしろいです。
2015-10-14 11Kozue Ganer
Misty Interior www.mistyinterior.com
インテリアデザイナー、ソフトファニシング デザイナー。 ロンドンにて、バイヤー、インテリアデザインコンサルタントとして活躍中。

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