今の、あなたのその投稿、大丈夫ですか?

なにげない投稿がプライバシーを危険にさらしているかも。

プライバシーが危ない! 日常にひそむセキュリティの盲点 【第2回】

メールでの連絡、SNSを使った情報共有、果ては銀行振込や金融取引まで、今やネット経由でなんでもできてしまう時代になりました。
そんなネット社会の現代だけに、あなたのなにげない行動がプライバシーを危険にさらしているかもしれません。
ここでは、普段はあまり気にすることのない、日常にひそむセキュリティの盲点と対策をわかりやすく解説していきましょう。

【お客様の部屋の写真を事例として紹介して、まさかの損害賠償!?】

住宅メーカーのインテリアコーディネーターとして働く沙織さん(仮)のお話です。
沙織さんは、資産家の鈴木さん(仮)邸の新築を担当しました。鈴木さんとの打ち合わせを重ねながら苦労して作ったプランは大成功。竣工した鈴木さん宅は、沙織さんも鈴木さんも大満足の会心の出来でした。

鈴木「いやぁ、本当にありがとう。沙織さんのおかげで本当にいい家ができたよ」
沙織「こちらこそ、何度も打ち合わせにお付き合いいただいて、ありがとうございました。ご満足いただけて、私もうれしいです。そこで、ちょっと相談があるのですが……」
鈴木「何? 他ならぬ沙織さんの頼み事なら、なんでも聞くよ」
沙織「うちの会社のホームページに、鈴木さんのお宅の写真を事例として紹介させていただけませんか?」
鈴木「なんだ、そんなことか。いいよ。家の住所とか、誰の家かとか、そういう情報さえわからなようにしてくれれば、写真なんていくらでも載せてくれていいから」
沙織「ありがとうございます!」

というわけで、沙織さんは鈴木さん宅のインテリアを撮影。それぞれの写真にこだわったポイントを説明する文章をつけて、内容を鈴木さんに確認してもらった上で、「東京都、S様邸」の事例としてホームページに掲載したのです。
ホームページの記事も評判になり、新しいお客様からの問い合わせも増えて、すべてが順調に思えていたのですが……。
ある日突然、沙織さんに鈴木さんから電話がかかってきました。

鈴木「沙織さん! なんてことをしてくれたんだ!」

 

鈴木さんからおしかりを受ける沙織さん
沙織「どうしたんですか?」
鈴木「ホームページに載せてもらった写真、友達に自慢しようと思って見せたら、家の場所が丸わかりだって言うんだよ。そこはわからないようにしてくれるって約束だったじゃないか」
沙織「でも、お名前はS様と伏せていますし、住所も東京都としか載せていませんけど……」
鈴木「いや、わたしも詳しいことはわかんないんだけどね。写真に場所がわかる情報が埋め込まれてるとかなんとか言われてさ。もしも本当に住所がわかる状態で公開していたんだとしたら、法的な措置も考えなきゃならないよ!」
沙織「申し訳ありません! すぐに調べて折り返しお電話します」

そう言って電話を切った沙織さんですが、なにが起きているのかさっぱりわかりません。そこで、会社の情報システム部門の担当者に相談することにしました。

【写真に隠された秘密の情報】

沙織さんが相談したのは、情報システム部門の永井さん(仮)です。永井さんは、沙織さんの話を少し聞いただけですぐに状況を理解した様子で、うなずきました。

永井「ああ、それは『ジオタグ』ですね」
沙織「それはなんですか?」
永井「もともと、デジカメ写真には、撮影に使った機器のメーカーや機種名、絞り値やシャッタースピードのような撮影条件などが自動で記録されるようにできてます。スマホのようにGPS機能のついた機器で撮影した場合には、撮影した場所の緯度経度も記録されます。この緯度経度の情報が、俗にジオタグと呼ばれているものなんですよ」
沙織「緯度経度……ということは……」
永井「そう、撮影した場所が屋内なら、その家の場所がわかっちゃうってことです。ためしに、問題の写真を調べてみましょうか」

永井さんはそう言うと、ホームページに載せた写真を調べ始めました。

永井「うん。やっぱり緯度経度の情報が入ったままになってますね。この緯度経度をネットの地図で検索すると……はい。地図上に撮影場所がピンポイントで出てきます。ここ、鈴木さんのお宅の場所で間違いないですか?」

鈴木さんの家の位置が表示された地図

※この場所はメガソフト株式会社の本社です。ここから富士山は見えません(笑)詳細は次項を参照。

沙織「間違いないです……でも、どうしたらいいんですか? そんなものが入っちゃうなら、デジカメの写真なんて使えないじゃないですか」
永井「もちろん、この情報は削除できますよ。ホームページに載せたりするときは、削除してからにすればいいんです」
沙織「そういうのって、ホームページの製作を依頼した会社がやってくれるべきですよね」
永井「いやぁ、製作会社からすると、提供された写真はそのまま使っていいものだと判断しますよね。ジオタグを削除した状態で渡すか、依頼時にジオタグを削除してから使うように指示をしないと」

沙織さんは釈然としなかったものの、ホームページの製作会社に依頼をして、ジオタグを削除した写真に差し替えてもらいました。幸いにも対応が速かったために、鈴木さんから訴えられることはありませんでした。
ところが、さらなるトラブルが沙織さんを襲います。きっかけは、永井さんからの1本の電話でした。

【ネットでの写真公開にひそむ罠】

沙織「あら、永井さん。この間はありがとうございました。おかげで、あまり大きな問題にならずに決着できました」
永井「それなんですけどね、他にもちょっと危ない写真があることに気づいたんです」
沙織「えっ? どの写真ですか?」
永井「窓が大きく映っている写真です。窓の外の景色に、小さくですけど富士山が映っていますよね」
沙織「ええ。ご自宅から富士山が見えるのが、鈴木さんの自慢なんです」
永井「そこですよ。この条件で富士山が見える東京の住宅地って、かなり少ないと思うんです。手間暇をかければ、住所は見つけられると思いますよ。安全策で、外の景色は画像処理をして見えなくしておくといいと思います」
沙織「そんなことまで……ただの写真だと思ってましたが、いろいろあるんですね……」
永井「便利になった反面、気をつけなきゃいけないことも増えましたよね。それはそうと、沙織さんは一人暮らしでしたよね?」
沙織「ええ、そうですけど」
永井「SNSってやってます?」
沙織「ええ、やってます……」
永井「自宅で撮影した写真、公開してませんか?」
沙織「してます。それも、ジオタグなんて気にしてませんでした……まずいですよね?」
永井「Facebook、Twitter、Instagramのような有名どころは、投稿時にジオタグを自動で削除する機能をつけてくれているようですね。でも、使っているSNSやブログがジオタグを自動で削除してくれるかどうかは、投稿前にきちんと確認しておくべきですね」
沙織「よかった、わたしが使ってるのはInstagramです」
永井「それでも、背景の景色とかは気にしてないと。特徴的な建物や看板がひとつ写っているだけで、撮影場所は特定できちゃいますからね。女性の一人暮らしでそれは、かなり危ないと思いますよ。SNSで公開されている顔写真を見た男が、この女性とお近づきになりたいな、と思って調べたら住所までわかっちゃうんですから。ぼくの場合は男ですから、あんまり気にせず公開してますけどね。逆にそこまで熱心に女性から追いかけられたいな、なんて思ってるくらいで(笑)」

窓からの景色一つで場所が特定されることもあります。

窓からの景色一つで場所が特定されることもあります。

永井さんは精一杯の冗談を言ってくれたようですが、沙織さんはその冗談を笑うことはできませんでした。

【ネット投稿で気をつけるべき4つのポイント】

沙織さんの話を中心に、ポイントを整理してみましょう。

・写真に埋め込まれているジオタグに要注意
プライベートな場所で撮影した写真のジオタグは、立派な個人情報になりえます。公開する前には、ジオタグの削除が必要かどうかを判断して、適切に処理してください。ジオタグ(正式名:Exif情報)の削除方法については、「Exif情報 削除方法」で検索をするとさまざまなツールが出てきますので、参考にしてご自分の環境に合ったものを選ぶといいでしょう。
すでにホームページに何枚もジオタグつきの画像を上げてしまっている……そんな場合は、複数の写真のジオタグを一括削除してくれるツールを探してみるといいかもしれません。

・写真に写り込んでいる景色や品物にも気配りを
写真の背景に写り込んでいるものにも注意が必要です。景色から場所が特定されることもありますが、室内に置かれている高級品などが映っているだけでも、泥棒の標的にされかねません。
サクセス!インテリアで紹介されている「TouchRetouch」など、かんたんなアプリを使って手早く修正することもできますので、試してみてはいかがでしょうか。

・SNSで公開する情報の危険性
SNSでは顔や名前、居住地域、出身地、仕事など、さまざまな情報がわかってしまいます。最近では、撮影された1枚の写真から、写っている人物の個人情報をSNSから集めてくる、という技術も存在しています。顔写真もそうですが、不必要なプロフィールは入力しないようにしておきましょう。

・投稿の公開範囲を意識する
SNSを使っていて、友達に送ったつもりのプライベートなメッセージが、実は公開されていて全世界に発信されてしまった……そんなトラブルが近年では多数報告されています。ネットに投稿する情報は、基本公開されてしまうものと考えておきましょう。プライベートな話は、投稿する前に公開範囲が限定されているのかを慎重に確認してください。

SNSへの投稿時は公開範囲に注意。思わぬところから情報が漏れることも・・・。

SNSへの投稿時は公開範囲に注意。思わぬところから情報が漏れることも・・・。

今回はジオタグのマイナス面を取り上げましたが、旅行の写真を地図の上に配置して思い出として残しておくなど、楽しい使い方もあります。メリット、デメリットをきちんと理解して、トラブルを未然に防ぎましょう。それではみなさん、良いデジタルライフを!

 

著者:滝澤真実

滝澤真実氏ITコンサルタントにしてハッカー小説作家。企業や個人のIT全般に関する困り事の相談に乗るかたわら、その豊富な知識を生かして娯楽小説を執筆している。
滝澤真実 小説公式サイト http://masamitakizawa.correctica.jp/

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